山形県鶴岡市にある「社会福祉法人 地の塩会 荘内教会保育園」

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2020年4月22日

笑いとユーモアの別世界
-災いに負けぬ力の源泉-

矢澤俊彦


暗闇から解放するユーモア精神 「こんな時代こそ笑おう」と題した黒羽根洋司氏の提案に深く共感しました(荘内日報4月1日号)。氏はあのナチスを恐れず国民を鼓舞したイギリスの名宰相チャーチルが優れたユーモアの人で、「笑うだけで逆境の自分を救ってくれる」ことを知っており、彼にかかれば、「国民は不安と心の暗闇が魔法のように取り払われて、笑いでたちまち明るい気分にさせられたのだろう」、と記しておられます。笑いはどんなに深刻で悲観的な状況をも相対化します。それは自分たちを圧する現実から自由な、より高い視点からやってくるものだからでしょう。

この災いは永遠に続かず 私もあの時代大活躍した喜劇役者チャーリー・チャプリンを思い起こしました。全欧州を恐怖のどん底に叩き込んだヒトラーの暴力も、「もうすぐ終わりがくるのだ」、と激励したのです(『独裁者』最後の演説)。そこにはこの世界の行方に関する大いなる楽観主義が感じられます。
私もきわめて微力ながらチャーリーに刺激されて、今のコロナウイルスに翻弄されている感のある多くの人々に叫びたいのです。「この災いはいつまでも続かない。この暴虐には終わりが来る。人類の叡智と神の庇護による勝利の日は近いのです」と。
 
収容所の中で笑い合おう 黒羽根さんは、またその時強制収容所に閉じ込められていた精神科医ヴィクトール・フランクルが死の恐怖におびえる仲間を集め、面白おかしい話を出し合い、笑いころげて生きる力を得たことを紹介しています。そこで私は読者の皆さんに提案があります。私たちも今「自宅」という牢獄?に強制収容されています。でも幸いつらい労働などなく、時間がたっぷりある人が多い。そこで皆さん頭をしぼって、面白い話、ゲラゲラ笑っているうちに悪鬼・悪霊・病霊などが「こりゃあ、かなわん」としっぽを巻いて退散してしまうように、思いついたまま、ひらめいたまま、あるいはずっと昔の薄れた記憶の引き出しから取り出し、短文でもいい。思いきって庄内の同志にお話してもらいたいのです。この「日報」紙上に、編集部が困るくらいに沢山の投稿をしていただきたいのです。

同病相憐れむ我ら 誤解しないでください。私はこれを日報社から依頼されているわけではありません。ただ「同病相あわれむ」という言葉が、これほど全国民的(また全世界的)にピタリとあてはまる状況などないからです。こんなことはまずありませんでした。戦争の時代が少し似ていますが、今私たちは出兵兵士を日々送り出したり、敵軍の空爆におびえたりしなくていい。状況は、はるかによいのです。勿論生活不安などご心配もあるでしょう。でもそれらをしばらく忘れてゆっくり休み、充電する中で得た楽しい話、大失敗談、中高生でも笑いころげてしまうようなとっておきの物語など、大いに語りあって励ましあおうではありませんか。とにかく笑いとユーモアというものは、「別世界」からやってきて今の現実を相対化し、希望を与えてくれる不思議な力を持っているからです。

凄まじい14世紀のペスト そこで「言い出しっぺ」ということでまず私が紹介したいのは『デカメロン』(妙な名前ですが)、イタリアの小説家ボッカチオの作品です。書かれたのは14世紀中ほどで、まさに欧州史上忘れ難い、凶暴なペストが荒れ狂った時代です。私はその様子が書いてあるというので初めて読み始めたのですが、やがてペストより物語のとりことなってしまったのです。もっともこの疫病の暴虐は、まったくすさまじいもので、毎日何千人もの人々の死体が町を埋めつくす有様など次々記され、これによって現代日本の現状も、それこそ相対化されるような気分になります。

デカメロンは、抱腹絶倒の世界 ところで『デカメロン』の舞台は、イタリアのフィレンツェ。ペストの攻撃から逃れてこの町の郊外に引きこもった男3人女7人が導かれるままに語り合った、という設定。世の人々の愚かさや弱さゆえの大失敗や様々な悪、恋愛事件など。男女のだましあいや幸せになれない恋人たちの話。苦労の末に、幸福を勝ち取った人。とっさのうまい返答で危機から救われた人の話などなど。時代を超えてみんなが大笑いするような物語が合計百も詰まっているユーモアの大冊です。

教会を騙した大悪党 さらにローマ教皇庁や修道院内部の驚くような堕落や腐敗ぶりが赤裸々に語られているのも、驚きです。これには、たくさんありますが、たとえば教会をまんまと騙して、「聖人」としてまつり上げられるのに成功した大悪党の話。その男は、人の道にもとる「七つの大罪」をすべて犯したうえに、いよいよ死が近づいてきたとき、もう一つの大罪を加えようと計画。カトリック教会にある個人的な「ざんげ」の制度(告解といいます)を利用して、自分の犯した微小な罪を並べたてると(もちろん大罪については、ほのめかしもせず)、聞いた神父は、大変感動し、なんという敬虔で信仰の深い人だと思い、彼の死後その徳の高さをPR、それが効をそうして、ついに聖人にまで高められたという滑稽極まりない話です。これは、告解を取り上げながら、当時の教会への強烈な皮肉と批判になっています。そのころの教皇庁の権力は、すごいもので、たぶん今の米国大統領をはるかにしのぐほどのものでした。それを相手にして、あれだけのものを書くという勇気、批判とユーモア精神は、実に恐るべきものです。この権威にたじろがない人物が、この時代にやってきたら何を言い始めるでしょうか、想像力が刺激されます。

欧州文化の深さ 出版後この書は、早速禁書とされたようですが、とにかくこれだけのものが書かれ、それが考えようによっては、ペスト騒ぎより生き延びた感じすらするのは、興味深いことです。そして、このようなものを許容する文化の深さや寛容さも感じます。言葉や文学の力の偉大さでもあります。またあれだけの自由な精神の発露や教会への徹底した批判を許す、ヨーロッパの文化に大きさを感じます。ボッカチオもただのエンターテイナーであっただけではなく、人間への愛と洞察力を持ち、どこかに真面目さと敬虔が隠されているような気がします。私の青年時代は、マジメ一方だったので、この物語など味わう力もゆとりもなかったのですが、最近になって作者の魂胆がわかってくるような思いがします。
それでは皆さん、時間はたっぷりあります。大いに休み、考え、読み、書こうではありませんか。

荘内日報に掲載されたものです



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