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2019年12月16日
人類の大きな落し物 -クリスマスをめぐる4つの言葉-
矢澤俊彦
大戦や冷戦が終わったのに、国の内外を問わず、憎しみや暴力、また争いの氾濫が私どもを暗くさせる年の瀬となりました。闇の力が重くのしかかっているような今の世界です。人類はなんとかしてこの状態を脱出しなければなりません。明るいクリスマスを待ち望む今、次の4つの言葉について考えてみました。
1. 「みんな違ってみんないい?」 金子みすずの言葉が有名ですが、まずはこの考えに間違いはないでしょう。「世界にただ一つの花」というフレーズもはやりました。ただこれには警戒すべき落とし穴があると思われます。それはこれを自己主張や自己愛の為ばかりに用いることです。それを避ける為には自分(たち)と違う人(々)の美しい花を十分に認め、共に生きようとする強い意志が必要です。でないと異なる人たちを恐れたり、差別を始める事になるでしょう。
2. 「惑星である人間」 様々な人々と共に生きる為には、まず自分がしっかりした「自己肯定感」を持つと共に、他者をも肯定する強いエネルギーを持つことが必要です。でも、これが困難なのです。考えてみると、私達人間を星に例えれば、「惑星」であること。恒星のように自分の内部に光源熱源を有せず、地球のように太陽の光と熱を浴び、それを照射しつつ光り輝く存在であることです。結局、どんなに努力をしても自分の中からは、自他を愛する力は湧いてこない、これが問題です。 それでも私たちは自分の力でそこをなんとかしようと懸命です。でもこの自己愛の道は迷路なのです。
3. 「悪とは方法の誤り」 でもこの出口なしの努力は、個人のみならず人類的規模におよんでいます。いわば、今や人類全体が深い森の中で迷子になっている。これは私が最近紹介しているC.チャプリンの考えでもあります。近代以降、我々はもっと経済力や富があれば、さらに科学技術が進歩すれば、また人類が教育によって無知から啓蒙されれば・・・などと考えて懸命に歩んできましたが、結果は戦争と暴力、貧困と飢えをどうすることもできないでいる。これを「悪とは幸福を誤った方法で求めるとき発生する」と見抜いたのは哲学者ハイデガーでした。もっとも大切な愛情を受ける代わりに、良さそうに見えるものを所有することで幸せになろうとしたのです。でも、この道は誤っているのです。
4. 「ただ愛を知らぬ者だけが」 以上述べた私達の迷走を真正面から解決し、人類を闇から光の世界へとぐっと引き上げてくれるのがクリスマスの訪れです。私たちが見失ったものは、全ての人を照らす大きくかつ強力な光です。私たち惑星を輝かせてくれる太陽のような存在です。ひとり一人に強い肯定感で「元気で生きていきなさい」と激励し、他の異なった全ての人々にも同様に語りかけている。これこそ、キリストと呼ばれる救世主なのです。 クリスマスがこんなに広く世界の人々からお祝いされているのは、このためなのです。 「ただ愛されなかった者だけが人を憎む」。私達に強い憎しみや暴力で迫ってくる人たちこそ、大きな愛で包んであげる必要があるのです。「みんな違ってみんないい」を本当に現実化する為には、このクリスマスの光を浴びることが必要と感じます。
鶴岡市本町三丁目 日本キリスト教団荘内教会牧師・同保育園長
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