山形県鶴岡市にある「社会福祉法人 地の塩会 荘内教会保育園」

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もっと人間的な優しい世界に
憎しみや残忍さに打ち勝てる人間
―チャプリンの現代への訴え―

2019年8月27日

矢澤俊彦


 戦争と平和について考えさせられた暑い夏の終わりに、読者の皆さんに、私が20世紀最高の名演説と思うとともに、そこからはかり知れぬ力を与えられているメッセージをご紹介したいと思います。
  それは、あの優れた喜劇俳優チャーリー・チャプリンが『独裁者』という映画のラストシーンで呼びかけている6分間の崇高な演説です。多くの方はご存知と思いますが、最近私は大野裕之氏の『チャップリンとヒトラー』という書物とともに、このスピーチを何回も熟読しているうちに、今の時代を生きる方々に、ぜひ改めてお読みいただきたいと思ったわけです。
  チャプリンとヒトラーは、ただ4日違いの生まれ。やがて一方は、20世紀で最も愛された人。他方は、最も憎まれた男となりました。1940年6月、あの独裁者がパリを占領し、世界を震撼させていたとき、チャプリンはハリウッドでこの映画最後の演説と取り組んでいたと大野さんは紹介しています。今日は、彼が何十回も推敲を重ねたに違いない、その全文を掲載していただくので、ここでは、ほんのわずかなことだけ記させていただきます。とにかくこれは、時代を超えた私達すべての人間が生きるべき道と真理が示され、希望と生命にいかしてくれる大きなパワーに満ちているのですから。
  第一は、なんと言ってもあの独裁者に一人立ち向かう彼の勇気です。もうダメだと無力感と絶望に沈む世界の人々に悪は滅び行く。民衆には、新しい時代を切り開く力があると激励しています。
  第二に、私たちを支配する独裁者たちの中に「機械」というものがあり、これかがますます人間を追いつめ、私達を失速させようとしています。私達は奴隷じゃない、機械じゃないんだ、との叫びは、1世紀前よりずっと深刻に聞こえてきます。
  第三は、傾聴すべき多くの光る言葉の中でも、「ただ愛されない者だけが、憎むんだ」(Only the unloved hate.)‐矢澤‐について、私は深く思いを潜めています。憎しみは、愛によってこの世から追い出すことが出来るのです。 それでは、前半のハイライトと感じた素晴らしいチャプリンの語りかけを並べて見ましょう。
  「・・・スピードは速くなったが、人は孤独になった。富を産み出すはずの機械なのに、私たちは貧困の中に取り残された。知識は増えたが人は懐疑的になり、巧妙な知恵は、人を非情で冷酷にした。私たちは考えるばかりで、感情をなくしてしまった。私たちには、機械よりも人の心、抜け目のない利口さよりも優しさや思いやりが必要だ。そういったものがなければ、人生は暴力に満ち、すべては無になってしまう。」
  それでは、以下にその全文を記しますが、いくつかの見出しは、私がつけさせていただきました。




『独裁者』結びの演説
 

*** この世界には、一人一人の場所がある ***

 申し訳ない。私は皇帝なんかになりたくない。そんなのは私のやることじゃない。誰かを支配したり征服もしたくない。できれば、ユダヤ人にしろ、キリスト教徒にしろ、黒人にしろ白人にしろ、みんなを助けようと思っている。 私たちはみんな、お互いに助けたいと望んでいる。人間とはそういうものだ。他人の不幸によってではなく、お互いの幸福で支えあって生きていきたい。私たちは、お互いを憎んだり軽蔑したりしたくない。この世界には一人ひとりの場所があるんだ。そして良き大地は豊かで、みんなに恵みを与えてくれる。

*** 貪欲が人の魂を毒した現代 ***

 人は自由に美しく生きていけるはずだ。なのに、私たちは道に迷ってしまった。貪欲が人の魂を毒し、憎しみで世界にバリケードを築き、軍隊の歩調で私たちを悲しみと殺戮へと追いたてた。スピードは速くなったが、人は孤独になった。富を産み出すはずの機械なのに、私たちは貧困の中に取り残された。知識は増えたが人は懐疑的になり、巧妙な知恵は、人を非情で冷酷にした。私たちは考えるばかりで、感情をなくしてしまった。私たちには、機械よりも人の心、抜け目のない利口さよりも優しさや思いやりが必要だ。そういったものがなければ、人生は暴力に満ち、すべては無になってしまう。


*** 友よ、絶望してはならない ***

 飛行機とラジオは私たちを結び付けた。本来それらの発明は人間の良心に訴えて、国境を越えた兄弟愛を呼び掛け、私たちを一つにするものだ。今も、私の声は何百万という人々に届いている。何百万もの絶望する男や女、そして小さな子供たち、人々を拷問し罪なき者を投獄する組織の犠牲者たちに。そんな人々に言おう、絶望してはならない、と。今、私たちを覆う不幸は、消え去るべき貪欲、人間の進歩の道を怖れる者の敵意でしかない。憎しみは消え去り、独裁者たちは死に絶える。彼らが民衆から奪い取った権力は、再び民衆のもとに戻るだろう。人に死のある限り、自由は決して滅びることはない。


*** けものや機械に身をゆだねるな ***

 兵士たちよ!けだものに身をゆだねてはならない!あなたたちを軽蔑し、奴隷にし、生き方を統制し、何をして、何を考えて、どう感じるかまで指図する奴らに。彼らはあなたたちを猛訓練させ、食事まで規制し、家畜のように扱って、大砲の餌食にする!そんな血が通っていない奴らに身をゆだねてはならない。機械の頭と機械の心を持った機械人間に。みんなは機械じゃない、みんな家畜じゃない、みんなは人間なんだ!心に人間の愛を持っているんだ。憎んではならない。ただ愛されない者だけが憎むんだ。愛されない者と血の通わぬ者だけが。


*** 各自の中にある幸福を創る力 ***

 兵士たちよ!隷属のためにではなく、自由のために闘おう!「神の国はあなた方のうちにある」と、『ルカ伝』17章に書いてある。それは、一人の人や一つの集団ではなく、すべての人々、みんなのうちにあるんだ!あなたたち、民衆は力をもっている!機械を産み出す力を。幸福を創る力を。あなたたち、民衆はこの人生を自由で美しいものにし、素晴らしい冒険にする力をもっている!さあ、民主主義の名のもとに、その力を使うんだ!力を合わせて、新しい世界のために闘おう!人々に仕事の機会を与え、若者に未来を、老人に保障を与える立派な世界のために。


*** 貪欲と憎しみと偏狭なき世界のために ***

 けだものたちもそんな約束をして権力にまでのぼりつめた。だが、彼らは嘘つきだ!彼らは約束を守らない。絶対に守ろうとしない。独裁者たちは自分たちを自由にし、民衆を奴隷にする。今こそ、あの約束のために闘おう!世界の解放のために闘うんだ。国同士の壁を取り除くために、貪欲と憎しみと偏狭を取り除くために。理性ある世界―科学と進歩がすべての人々の幸福へと通じている、そんな世界のために闘うんだ。
  兵士たちよ、民主主義の名のもとに、持てる力を集めよう!
  ハンナ―僕の声が分かる?どこにいても空を見上げて、ハンナ!雲が、切れて、日がさし始めた。僕たちは暗闇を抜けて、光の中に入っていく。僕たちは新しい世界に近づいている。もっと心優しい世界に。人間が自分たちの憎しみや貪欲や残忍さを克服する、そんな世界だよ。
  元気を出して、ハンナ。人間の魂には翼が与えられていた。今、やっと飛び始めた。それは虹の中へと飛んでゆく―希望の光へ、未来へと。輝かしい未来は、君や僕、そして僕たちみんなのものだ。上を向いて、ハンナ、元気を出して―。 

大野裕之著『チャップリンとヒトラー』 岩波書店より


(本町三丁目 荘内教会牧師・同保育園長)



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