山形県鶴岡市にある「社会福祉法人 地の塩会 荘内教会保育園」
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お花がすべて消えた国の話
2021年6月7日
(礼拝カード NO.9 お話 矢澤園長先生)
★ お花が実に美しい時節となりました。そこできょうはお花にちなんだお話をしましょう。ある国のお城にとてもプライドの高い、いばりんぼうのお姫様がいました。いつもきれいな服を着て、入念にお化粧をして・・・自分はもう最高にきれいだ、とうぬぼれ自慢していたのです。だからすこしでもきれいな人にあうと、夜も眠れないくらい嫉妬心で苦しむのです。王様や家来もこれには大弱り、でもどうすることもできません。
★ そんなある日、お姫様はひとりで散歩しているうちに、まだ来たことのない宮殿の奥の庭にやってきて・・・そこで呆然として立ちすくんだのです。・・そこには見たこともない美しい色とりどりの・・・そう「お花」というものを見たのです。
★ えっ、お姫様お花見たことないの?そうなんです。どうして?それはね、さっき言ったでしょ、自分が世界一美人だと高慢になっているお姫様がお花を見たら・・きっと頭がおかしくなっちゃうんじゃないか・・・王様も家来もそれを心配してお城の中には一輪の花もおかないようにし、ただこの奥の庭だけでそっと育てていたんです。
★ 案の定、お姫様はびっくり仰天です!「なんです、これは!この色、かぐわしいにおい、あらゆる形の魅力・・あまりのきれいさに圧倒された姫は、その場で気を失ってしまったのです!お城は大騒ぎとなりました。やがて気がついた姫が聞きました。「この花というのはここだけにあるのか?それともお城の外にもあるのか?」・・・困った質問ですが、もう正直に答えるほかありません。
★ 国中にこんな美しいものが咲き乱れていることを知ったお姫様はまっかになり怒り狂いました。「なんでわたしに隠しておいたのか、卑怯者!」と家来を叱りつけ、さっそく国中からすべてのお花を一掃するように命令を出したのです。仕方がありません。大勢の家来が出かけていっておふれを出しました。みんなびっくりしたり怒ったり文句を言ったり・・・でもしばらくのうちに、この国からすべてのお花が消えてしまったのです。
★ さてそれからこの国はどうなったと思います?お庭や道路や畑だけじゃない、お家や学校、病院やお店や散歩道や・・・もうどこへ行ってもお花の姿がないのです。段々みんな機嫌が悪く怒りっぽくなり、すぐけんかをするようになりました。みんな疲れて病人がふえてきます。歌や踊りもなくなり、結婚式も静か・・・火の消えたような国となって・・笑いのかわりに争い、思いやりのかわりに意地悪や冷たさが支配する・・太陽の昇らない暗黒の国となってしまったのです!
★ その様子がやがてお姫様にも伝わりました。何晩か眠らず考えこんだ姫。そしてやっと気づいたのです。「そうか、お花という不思議なものは、みんなを明るくするために天の神様がこの世に下さったもの。その美しさはすばらしい。自分がきれいだ、なんて自慢していた私はどんなにみにくいひどい人間だったことか!」 こう気づいた姫はみんなに謝るとともに、今度は国中をお花でいっぱいにするよう命じたのです。国にもお城にも平和が訪れたことは言うまでもありません。
過酷な条件下で美しい花が咲く
★ 最後に 花は「沈黙と服従の教師」(キルケゴール)であることを考えてみましょう。すなわち、どんな色や形や格好、また生きる場所を与えられても、それらをすべて甘んじて受け、不平や文句をひとつ言わない。自分に割り当てられた定め(デスティニー)が、たとえどんなに過酷であっても、そこで個性ある姿で咲き誇り、造物主の栄光を輝かしている!実にすばらしい。敬服して学びたい、すぐれた教師です。
山奥の人目も届かないがけっぷちなどに、この世のものとも思われないほど美しい花が咲いている。きびしい環境でこそ、とびきりきれいな装いをつけ、悠然と咲いている・・・かみしめたい事実です。
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