山形県鶴岡市にある「社会福祉法人 地の塩会 荘内教会保育園」

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2024年2月27日

あなたは生きているのか?
-復活祭をめぐる酒場談義-

矢澤俊彦


イースター(復活祭)礼拝

3月31日(日)午前10時 来会歓迎



(Aはクリスチャンで先輩、Bは彼の親友)


人間と動物の死の違い


A 世の中見まわしてみて、本当に生きてるっていう感じがする人がいるのかなー、と思う事があります。ずる賢いヤツや守銭奴、又詐欺師みたいなのがどっさりいるけどね(笑い)。

B そう言われると、オレも落第だ。少しばかり働いて庭いじり、あとはパチンコと酒飲みだ(笑い)。

A いきなり聖書で悪いけど、そこにはこう書いてある。「まともに生きてる人はこの世にいない。すべての人は迷い出て、ことごとく無益な者になっている」とありますよ。実際、迷いばかりが多く、はちきれんばかりに元気な人にはまずお目にかかれない。みんな下向き加減、多くは小さな世界に閉じこもってうつ、もう虫の息です。世界全体が、なんだか大きな「死を待つ人の家」みたいに見えてきます。

B きょうの復活祭の話はそれと関係があるんですね。ついでに今年のイースターは、3月31日と聞いてますけど、でもオレは面倒くさい話なんか嫌いだ。せっかくの酒がまずくなるからね。

A うん、わかってる。その酒が断然うまくなるような時間を過ごしたいんだ。

B 最初に言わせてもらうけど、自分は死んだ人間が生き返るなんてまずありえないと思う。そんなことになったら大変だ。今、もう超満員の地球が大変なことになるね(笑い)。

A ただ人間が他の動植物と違うことはすぐわかる。彼らはただ自然法則や本能に突き動かされて生き死にするだけ。ところが俺達は、意識も感情も持ち、記憶力や想像力もある複雑な生命だ。犬ネコが死ぬのとはわけが違う。そこで以前流行った歌なんかも口ずさむわけだ。あの秋川雅史が歌った・・・。

B うん、千の風です。「私のお墓の前で泣かないでください、そこにわたしはいません、眠ってなんかいません・・・」何だか心ひかれる歌詞ですね。カラオケでこそ歌わなかったけど(笑い)。

A それが人間のむなしい希望的観測に過ぎないかどうか。もしかしたら、そんな願いこそ心の奥底に隠れているのかもしれない。


主は予期せぬ出来事だった


B じゃあ、正直に言うけどオレも小さい時からふとした時に、自分がこの世から消えてなくなることを思うと、ギョッと身震いして立ちすくんだものだ。普段はそんなことは忘れて過ごしているけどね。

A 私の場合は20歳の時オヤジが病気で急逝した時のことだ。冷たくなってゆく父親にとりつきながら「こんなことがあっていいのか。ゆるせん」、「俺は必ずこの死と悪魔に復讐し、親父の無念をはらしてやるぞ」、と誓った。そして宗教の道に入ったんです。
 それ以来私が疑問に思ってきたのは、だいたい死ってものはいったい何かということなんです。これはとにかく大事件でこのうえなく残虐なものです。たとえばこの世で辛いこととして、自分の家を追われ、会社や故郷から追放されるなんてことがある。でも死というヤツは俺達をこの世界のどんな隅にも孤島にも置いてはくれない。「おまえは用無しだ」と強制的に追い払われ、煙となって一貫の終わりです。自分の存在は跡形も無くなり、誰からも忘れ去られてしまう。自分の意識も無くなり、それこそ無になってしまうのかもしれない。
 こうしてみるとこの奇怪で暴力的な死ってものは本来決してあってはならないものじゃないのかな、という気がしてきます。それが全く偶然、知らぬうちに外部からの異物のように侵入してくる。そしてわがもの顔で人間達の生命と人生をメチャクチャにしている。

B まったくだ。それに困るのは、この大変物騒(ぶっそう)な怪物がいつフラリとやってくるかわからない。これはとても手に負えない。それが明日かもしれない!これをまともに思うなら居ても立ってもいられない。まァ、大抵の人は当分の間は大丈夫だろう、などと多寡をくくっているけどね。ところがそれが危ない。これもみんな知っている今の世の中だ。そこで俺たちとしては、まず仕方なくデンと構えて「来るものは来い」と気張るか、もうあきらめて今のうちに大いに飲み食いして楽しむか・・・そのどちらでもなく、修行して万事に備えよう、なんて人は滅多にいませんね。

A なんだか大事な話になってきた。一杯つぐよ。庄内の酒は飲みすぎなければ頭を活性化してくれるからね。


死は神様との断絶から生じた


A それで、さっきの死への準備の話だけど、そのために随分難行苦行する人たちもいないわけではない。でも、そうしなくてもやってくる死を前に、どっしり構えていられる道があるのです。この道を歩めば、私達のような弱虫でもしだいに強くなる。そして相撲でいえば、横綱相撲が取れるようにもなっていくんです。

B ホントかなあ。そんなことになればすごい。痛快だ。人生の大怪我や人の意地悪や病気なんかも次々と土俵下に転落させることができるとすれば・・・。生きるって素晴らしいことになるじゃありませんか。

A そうだ。一生懸命進んで行けば、誰にも道は開けるのです。

B それをぜひ聞きたくなりました。実際オレの体調も万全ではないし、恥ずかしながら女房や子どもともうまくいかず、最近まいっているんです(笑い)。今の境遇から、脱出したいんです。

A そこまでいったなら、ぜひこれからの話を聞いてほしいと思います。それは、人間の死というものは、生命を下さった神様から逃げ、神様を無視し、反逆し、自分が主人公になって勝手な道を歩んでいることからくるのです。すなわち、人間の死というものは、自分が招き寄せている!でも、神様に近づいて行けば死もその恐怖も無くなる、これが聖書の教えです。

B ああ、思い出しました。あのリンゴの実を食べた話ですね。

A 聖書には、リンゴとは書いてありませんが、とにかく神様が禁じたエデンの園の中央にある木の実を食べた。これは、神様との大事な約束を破ってしまったことになる。

B その約束で思い出したのは、太宰 治の「走れメロス」です。友達との約束を果たそうとして、力の限り必死に走るメロスに高貴な人間性を感じます。

A そのような真剣な思いを神様に対して持つことができず、創世記のアダムは、神様に謝罪もせず、うそぶきながら約束を反古にした責任を妻やヘビになすりつけたのです。それからは、それまで明るかった園は、暗くなり、闇が支配するとともに、病気や老いの苦しみも発生し、死が跋扈超量(ばっこちょうりょう)する世界となってしまったのです。


浮気三昧の我らをゆるす復活祭


B 今の話を伺うと、あのアダムとイヴっていうのは、昔の人の話ではなくて、何だか自分のことが言われているようですね。

A そう、考えてみると、あの二人は、エデンを追われて以来、この地上を放浪しながら、労働や出産の苦しみのうちに死におびえながら、過ごすことになってしまったのです。
 神様との関係は、相変わらず断絶状態です。これは、夫婦関係を考えてみればわかるのですが、例えば、夫が浮気三昧を繰り返していて、妻がそれを許容するはずはありませんね。

B もちろんとっくの昔に縁をきって追い出すのが当然でしょう。

A でもそういう惨めな人類を見るに見かねて、率先して新しい命を注いで、私たちを災いと死から救おうとされたのがイースター(復活祭)なのです。

B 神様から逃げてばかりいた人間がすべてをゆるされて、神様のほうに向き直るということでしょうか。

A その通りです。もう長年の間、ひどい親子喧嘩をしてきた、その親の方でイニシアチブをとって、仲良くしようというわけです。このために神様は、私たち人類の全ての罪(罪責)を背負って死んだキリストに大きな力を注いで、墓からよみがえらせてくださったのです。それは、天地を創造したと同じくらい大きな力だったのです。

B スゴイことが起こったものですね。でも、そのことと私たちはどんな関係があるのですか。

A このことこそ大事な点です。私たちがそのキリストに近づき、力を受ける時、私たちも墓からよみがえらされる、いや生きている時も、もう死の恐れも消え去っていく。これは大きな人間の革命です。「あなたは生きていいんです。もうなんの心配もありません」という生命の一大肯定を受けるわけです。

B そうなるとどんなにうれしいことでしょうか。天にも昇る心地がすることでしょう。歌も心から歌えるようになるし、すべてのことに日々感謝することもできるようになる。大小の悪魔もたやすく投げ倒すような横綱相撲も取れるようになっていくとすれば・・・。それこそ生きてきてよかったと胸を張ることができるように思います。どうやらオレも復活しそうな気がしてきました。

A 今日は時間も少なく、舌足らずでしたが、イースターについて随分わかってもらえたようでうれしいです。

B 今日は、大分酔っちゃったけど、頭はしっかりしてますよ。とてもいい酒でした。ぜひ、また一献お願いします。

A 私もうれしい時間でした。反発ばかりされるのかと、ビクついたんですが、失礼ながらあなたの意外な素直さに触れて(笑い)何だか私も癒された気分になりました。ありがと。気をつけてお帰り下さい。

(日本基督教団 荘内教会牧師・荘内教会保育園理事長)



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